暮らしに活かすアーユルヴェーダ -ジッセン編-

シローダーラー、アビヤンガってなんのこと?アーユルヴェーダの施術・セラピーを一挙紹介

「アーユルヴェーダの施術、なにを受けるべきかわからない」

最近、アーユルヴェーダを知った方は、あまり聞き覚えのない施術に混乱してはいませんか?
アーユルヴェーダといえば、額にオイルを垂らすあの象徴的な画像を思い浮かべる方も多いはず。それは「シローダーラー」と呼ばれる施術です。すっかりアーユルヴェーダの代名詞にもなっているシローダーラーですが、そもそもどんなものなのか?
 
また、シローダーラーだけではなく、二人の施術者が行うマッサージ「アビヤンガ」など、アーユルヴェーダには、不思議な施術が満載。「アーユルヴェーダ、気になる…でも何を受けていいのかわからない…」そんなあなたのために、アーユルヴェーダの施術について、一つひとつ紹介していきます。
 

額にオイルをたらす「シローダーラー」

シロ・ダーラやシロダーラなどと表記されますが、正式な名称は「シローダーラー」。
シローダーラーは、シロが頭、ダーラーが垂らすという意味で、文字通り頭つまり額に垂らすという意味をもちます。実際に約30分程度額の第三の目のあたりに温かいごま油を細く垂らし続けていく方法をシローダーラーと呼びます。
顔や頭、首、肩などに痛みや緊張がある場合に行われてきましたが、効果はさらに脳のリラックスとも呼ばれるほどです。
 
シローダーラーの手順
1. 頭が少しテーブルの端にかかるように受け手の人はベッドに横たわります。首の下には、ぐるぐるに巻いたタオルを置き、頭を後ろに傾けるようにすると楽な態勢を保つことができます。
2. 床にオイルを受けるボールを置きます。
3. 温めたオイルをジョウロか、専用のシローダーラー器から額に垂らしていきます。
4. 額全体から髪の毛に流れていくようにすることで、体の痛みや緊張をひきおこすエネルギーを鎮めて、バランスをとります。
5. 終わった後も数時間は静かな場所にいて、ストレスが生じないようにリラックスすると効果的です。
 
使用されるオイルはごま油が主流ですが、ピッタが過剰の場合はオリーブオイルやローズウォーターを使用することがあります。また、カパが過剰な場合は、シローダーラーは避けることが多いです。
 

シローダーラーから期待できる効果

① リラックス
② 緊張の緩和
③ 瞑想的な状態
 
脳内の中心深くに、脳内科学物質を生成する効果が期待できるとされています。その中の一つがセロトニン。満足感とリラックスをあたえる化学物質です。精神を鎮静する効果も認められています。
 

流れるようなストロークでマッサージ「アビヤンガ」

アーユルヴェーダのマッサージは「アビヤンガ」と呼ばれます。本来は二名の施術者による左右対称に行われるオイルマッサージです。
受け手はベッドの上にあぐらをかき、二名の施術者は同時に頭~首~肩~腕~背中とオイルで巧みに流れるように、しかも力強くマッサージします。その後、受け手は仰向け、横向き、下向き、再度仰向けと、受ける態勢を変えながら施術者の流れるような長いストロークのマッサージを受けていきます。

その結果、体に蓄積されていた老廃物が皮膚から排出されやすくなります。そのためアビヤンガの後は、一般のアロママッサージと異なり、蒸気浴など体を温め老廃物の排出を促すようにすることが大切です。
 
終了後は少しやすんだ後、必要に応じてシローダーラーが行われることもあります。ですが、決してアビヤンガとシローダーラーを同時に行うことはありません。
 
また、日本では最近、一人で行われるアビヤンガが主流になってきているようです。もともとアビヤンガはパンチャカルマの前処置で毒素を排せつしやすくするためのもの。そのため、マッサージのテクニックよりも、いかに同時に毒素を流していくかが重要です。
 

期待できる効果

アーユルヴェーダでは、マッサージを毎日でも行うように推奨しています。アーユルヴェーダの古典書『アシュタンガフリダヤ』には、健康と幸せを望む人は身体のマッサージを行うようにすすめています。また、聖典『スシュルタサンヒター』には季節や気候、身体のタイプによって油の種類を変えることを指示しています。
 
以下、アビヤンガの効果についてまとめてみます。
① 老化防止
② 疲労除去
③ 視力の改善
④ 身体の強壮
⑤ 長寿
⑥ 深い眠り
⑦ 皮膚の強壮
後述にあるパンチャカルマは医療行為ですが、アビヤンガと発汗法は、サロンで受けることが可能です。アビヤンガには、体内の通路にこびりついたアーマ(未消化物・毒素)を溶かし、動きやすくさせる働きがあります。サロンではその後の発汗法で、汗として排泄させることまで行えます。
 
アーユルヴェーダでは、マッサージには高い効果があるとされています。毎日受けるのがベストですが、それがむずかしい場合には、3点マッサージがおすすめ。3点は、頭、耳、足裏です。
アーユルヴェーダサロンなど専門のところで受けるのもよいですが、セルフマッサージでしたら、気軽に毎日でも行って、高い効果を得ることができます。
 

特に期待できるのが美肌効果

マッサージによって血行が促進されると、体内の老廃物が洗い流されるため、老化防止や美肌効果が期待できます。また、血色もよくなるため、顔映りも明るくなります。メイクを変えたと勘違いされることも増えるかもしれません。さらに肌の張りやたるみなどにも効果が期待できます。
 
こんなときは控えよう!マッサージの禁忌
また、アビヤンガには禁忌があります。以下のときには、マッサージを控えましょう。
  • カパが悪化しているとき
  • せき、風邪のとき
  • 消化不良、便秘、嘔吐、初期の発熱
  • 下剤を使用しているとき
  • 食後
  • 性行為の直後
全身のマッサージを受けているときは消化の火が弱くなるので、それが時に病気の状態を悪化させることもあります。健康なときに受けましょう。
 
適切なマッサージの時間
マッサージの時間は、受け手の身体の状態をみて、施術者が決定します。
受け手の方が健康で、健康維持が目的なときは、45分以上の時間は必要ないとされています。また、肉体的に健康な年配者は、一時間以上の時間をかけ、ゆっくり丁寧に行うことが求められています。
  •  新生児:15分
  •  1~3歳までの幼児:15~25分
  •  健康成人:30~45分
  •  健康な年配者:60分もしくはそれ以上
  •  虚弱体質の人:30~35分
  •  筋肉痛の人:45~60分
 

血管の若返りを!「全身発汗法」

アーユルヴェーダのアビヤンガとアロママッサージの大きな違いは、施術の後に行う「発汗法」にあります。アロママッサージの場合は、その人にあった精油を選択しマッサージを施し、その後は気になるところは拭き取って終了となります。
アーユルヴェーダはデトックスの考えが根底にある医学。オイルを経皮吸収した後、汗を出し体内の毒素排せつを図ります。
 

期待できる効果

① デトックス効果
② 美肌効果
 

体内をきれいにデトックス「浄化療法(パンチャカルマ)」

アーユルヴェーダは、世界最古の伝統医学。その手法の中心を担っているのが、余分なものを減らす原理をベースにした浄化法です。体にたまってしまった毒素は、排せつしていかないと蓄積され、それが様々な病気を引き起こす原因とされています。そのために行われる方法が浄化法です。
 
現在も、インドやスリランカなどで受けられる浄化療法。その中心的な治療法が「パンチャカルマ」と呼ばれるもの。パンチャカルマは、パンチャ(5)+カルマ(行為)という2つの言葉から成り立ち「5つの治療法」を意味しています。
 
重さの質に関係するカパに関係する浄化法は、鼻からの浄化法と過剰な毒素を吐きださせる催吐法があります。火の質にかかわるピッタの過剰は、血液を濁しやすいため浄血法を行います。また下痢をさせてピッタの過剰を排せつさせることも行います。風の質のヴァータの浄化法は、浣腸法が処方されます。それぞれの治療法は、一人ひとりの状態をみながら最適なものを選択していきます。
 
参考文献:
「アーユルヴェーダ実践BOOK」P182~185

過去の記事

全て見る